業務外の犯罪行為
2019.12.27 - Friday
問題の事象
社員が休日に電車の中で、痴漢行為をしたとのことで逮捕されました。
会社としてのどのような処理をすれば良いでしょうか。
解説(基本的な考え方)
社員が休日に痴漢で逮捕された場合、そのような事実は会社にとって極めて不名誉であるとして、
直ちに懲戒解雇すべきと考えるところも多いかと思います。
しかし、直ちに解雇することは難しいと考えます。
そもそも社員は、私生活においてまで会社の一般的な支配に服するわけではなく、
会社が社員の私生活上の言動について懲戒処分をもって取り締まることができるのは、
それが企業秩序や職場規律に支障を与えている場合に限られると解されているからです。
逮捕の段階では、あくまでも「被疑者」です。
まずは事実を確認し、最終的に確定した後に何かしらの処分を講ずることになります。
トラブル回避できない場合のリスク
痴漢行為は法的には、「都道府県の迷惑防止条例違反」にあたる場合と、
「強制わいせつ罪」にあたる場合とがあるれっきとした犯罪行為です。
痴漢行為が事実と認められれば、恐怖だけでなく、
その行為に対する嫌悪感から社内の雰囲気が悪化することは避けられません。
会社は、勤務先としても監督責任まではいかないにせよ、大きなイメージダウンになる可能性があります。
社員は、信義則上、会社の利益や名誉・信用を毀損しない義務を負っていますので、
私生活上のこととは言え、その事件内容によっては、企業の社会的評価だけでなく、
企業秩序や職場規律にも支障を与える可能性があります。
規程・マニュアル作成上のポイント
まずは就業規則の服務規律や懲戒事由に関する規定の中に、
痴漢行為をはじめとする社外上のルールにおいて定義する必要があります。
また、最終的に起訴もしくは、裁判等の処分が確定するまでの間については、
休職規定を設定する必要があります。
企業秩序や職場規律に与えた支障について具体的には
①当該行為の性質、情状
②会社の事業の種類・態様・規模
③会社の経済界に占める地位
④経営方針
⑤当該社員の会社における地位・職種等
であり、こういった諸事情を総合的に判断して懲戒処分の可否や程度を検討していくことが適切です。
運用上のポイント
直ちに解雇することは避けて下さい。
逮捕の段階では、あくまでも「被疑者」です。
まずは事実を確認し、最終的に処分が可能になるのは、起訴もしくは、裁判等処分が確定した場合というのは原則です。
それが企業秩序や職場規律にいかなる支障を与えたかについて検討した上で、
懲戒処分の可否や程度について慎重に判断することが必要であるといえます。
例えば、初犯であって、常習性もなく、身柄を拘束された期間も短く、報道もされておらず、
示談が成立し、本人が深く反省しているというようなケースでは、懲戒処分の可否については慎重に考えるべきであると言えます。
人材マネジメント上のポイント
ワークライフバランスが叫ばれている中、従業員の生活は会社だけでなく、
会社外の生活も重視する傾向になることは非常に良いことですが、同時に業務外でのトラブルが多くなります。
人材マネジメント上の対応としては、業務外におけるトラブルについては業務に対する影響がなければ、
何も講ずることができないことが前提になりますが、何かしらのストレスを抱えており、
それを解消することによって解決できることも多々あります。
それには、月並みかもしれませんが、管理者が従業員の動向を日々チェックすることが必要です。
例えば、業務の進捗、周りとのコミュニケーション状況などが挙げられます。
また、1on1等を通じて、プライベートの悩み等もキャッチアップすることも重要になるかと思います。
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