産休に入る女性社員の給与計算でやるべきこと|産休前〜産休後の処理まで徹底解説!
最終更新日:2025.12.31
従業員から産休取得の申し出があったとき、「給与計算はどうすればいいのか」と手順を思い出せず、不安を感じることはありませんか。
社会保険料の免除、住民税の徴収不足(マイナス給与)、申請期限の管理など、対応する機会が限られる業務だからこそ、実務で迷いが生じます。
社会保険料は免除されるが住民税は免除されない、賞与にも免除のタイミングがある、翌月徴収の場合は徴収停止月を間違えやすいなど、判断を誤ると会社に損害が発生したり従業員とのトラブルにつながります。
本記事では、社労士事務所として数百社の給与計算を代行してきた実務経験から、産休社員の給与計算の基本フローと注意点を解説します!
この記事でわかること
- 産休中の給与支払いの有無と日割り計算の基本
- 社会保険料免除と住民税の取り扱いの違い
- 賞与支給月の保険料免除の条件
- 社会保険料免除の申請手順と忘れた場合のリスク
- 産休中に従業員が受け取る公的給付金
- イレギュラーケースへの対処法
まずは『産休社員の給与計算』の基本から!

産休社員の給与計算を始める前に、制度の基本を押さえておきましょう。産休が月の途中で開始する場合、給与は日割り計算が基本です。計算前に必ず自社の就業規則・賃金規程を確認してください。
産休申請OKは…『産前6週間』が原則!
産前産後休業の期間は、労働基準法第65条により定められています。
出産日の翌日から8週間は就業禁止ですが、産後6週間を経過した後、本人が希望し、医師が支障ないと認めた場合に限っては就業させることが可能です。
産休期間中の給与支払い義務は法律上ありません。就業規則で有給扱いと定めていない限り、多くの企業では産休中を無給としています。
なお、産休は労働基準法に基づく制度で、育児休業(育児・介護休業法)とは異なる制度です。
出典:『e-Gov法令検索|労働基準法第65条(産前産後)』
日割り計算は『月給÷働く予定の日数×実際に働いた日数』が基本
産休が月の途中で始まる場合、その月の給与は日割り計算で支給します。
計算式は次の通りです。
月給 ÷ その月に働く予定だった日数 × 実際に働いた日数 = 支給額
ただし、日割り計算の基準となる「働く予定の日数」は、会社の賃金規程によって異なります。
主に以下の3つの方法があります。
- その月の実際の労働日数(最も一般的)
- 1ヶ月平均の労働日数(年間の平均を使う)
- カレンダー上の日数(30日や31日で計算)
どの方式を採用するかは就業規則・賃金規程で確認してください。
【具体例】月給30万円の社員が9月15日から産休開始
月給30万円の社員が9月15日から産休を開始した場合で見てみましょう。
9月の労働予定日数が20日、実際に働いた日数が10日(9月1日〜14日)だった場合の計算は次のようになります。
300,000円 ÷ 20日 × 10日 = 150,000円(基本給の支給額)
この150,000円から各種控除を行いますが、産休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されるため、社会保険料は引きません。
一方で、以下のものは通常通り引く必要があります。
- 住民税
- 雇用保険料
- 所得税
【免除について】産休中の「社会保険料」と「税金」はどう扱う?

産休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されますが、住民税は免除されません。
この違いを正確に理解しないと、計算ミスにつながります。
産休開始月から保険料免除が適用される(会社・本人とも負担なし)
産休期間中は健康保険・厚生年金保険料が免除される制度があります。
事業主が申出を行うことで、産休期間中の社会保険料の本人負担分・会社負担分の両方が免除されます。
免除される期間を具体例で見てみましょう。
例1:12月31日に産休が終了する場合
- 産休開始日:9月15日
- 産休終了日:12月31日
- 産休終了日の翌日:1月1日
- 産休終了日の翌日が含まれる月:1月
- その前月:12月
この場合、9月〜12月の4ヶ月間が免除期間となります。
例2:12月30日に産休が終了する場合
- 産休開始日:9月15日
- 産休終了日:12月30日
- 産休終了日の翌日:12月31日
- 産休終了日の翌日が含まれる月:12月
- その前月:11月
この場合、9月〜11月の3ヶ月間が免除期間となります。
重要:たった1日の違いで免除期間が1ヶ月変わる
上記の例のように、産休終了日が12月31日か12月30日かという1日の違いで、免除期間が1ヶ月も変わってしまいます。
産休終了日の設定には十分注意が必要です。
給与計算では、産休開始月から免除期間が終わるまで、社員の給与から社会保険料を引かないようにします。
もし手続き漏れで免除期間中の保険料を引いてしまった場合、後から従業員へ返金し、会社も年金機構に返してもらう手続きをする手間が発生します。
産休中のボーナスも保険料免除になる(月末に1ヶ月超休業が条件)
産休中に賞与(ボーナス)を支給する場合、その賞与にかかる社会保険料も免除対象となり得ます。
産休期間中に支払われる賞与については、賞与支払月の末日が産休期間内であれば、保険料は全額免除となります。
(※育児休業中の賞与免除には「連続して1ヶ月を超える休業」という条件がありますが、産休にはその条件はありません)
条件を満たす場合、賞与にかかる社会保険料は全額免除となります。
逆に、支給月末に在籍勤務している場合は、通常通り賞与に対する社会保険料が発生します。
翌月徴収の場合は産休開始月の保険料を翌月給与で引かない
翌月徴収(前月分の保険料を翌月の給与から引く方式)の場合、産休開始月の保険料は翌月給与で引く予定となりますが、産休開始月から保険料免除が適用されるため、翌月給与では前月分の保険料を引かない処理が必要です。
産休が始まった時点で、保険料を引かない設定に変更することを忘れないようにしましょう。
住民税は免除されず給与ゼロでもマイナス発生のリスクあり
住民税は産休中も免除されません。
前年の収入に基づいて計算されるため、産休で今年の給与がなくても支払う義務が続きます。
産休開始月やその前後で「支給する給与より引く住民税の方が大きい」場合、マイナス給与が発生することがあります。
対処法は主に2つあります。
- 短期の休業向け:会社が一時的に立て替える
- 長期の休業向け:従業員が自分で納付する方法に切り替える
産休に入る前に、従業員本人と住民税の支払い方法について話し合い、合意しておくことが重要です。
雇用保険料と所得税は給与の支払いがあれば引く
雇用保険料(従業員が負担する分)については、産休中であっても免除される制度はありません。
雇用保険料は支払われた給与に対して一定の割合を掛けて計算されるため、産休期間中に給与の支払いがなければ結果的に保険料も発生しません。
産休開始月・終了月に日割りで給与が発生する場合は、その分について通常通り雇用保険料を天引きします。
所得税についても、産休中の給与支払いがなければ天引きする所得税もありません。
産休中でも会社から給与や手当を支給する場合には、その支給額に対して所得税を計算して引く必要があります。
なお、出産手当金や育児休業給付金は税金がかからない収入のため、所得税はかかりません。
社会保険料免除はどう申請する?

産休中の社会保険料免除を受けるには、申請が必要です。
申請を忘れると、会社が保険料を負担し続けることになります。
「産前産後休業取得者申出書」を速やかに年金事務所へ提出
社会保険料免除の申請に必要な書類は「産前産後休業取得者申出書」です。
産休に入る社員が所属する事業主が記載して、管轄の年金事務所に提出します。
提出方法は電子申請・窓口持参・郵送いずれでも可能です。
実務上は産休開始後、できるだけ早く提出することが推奨されています。
手続きが遅れるとその間は保険料が免除されず会社の負担が発生してしまうため、産休の申し出を社員から受けたら早めに申出書を作成・提出するのが望ましいです。
申出書には被保険者の氏名・生年月日、事業所情報、被保険者整理番号、基礎年金番号、産前産後休業の開始日および終了予定年月日、出産予定日および単胎・多胎の別を記載します。
産休期間に変更や延長があった場合は「産前産後休業取得者変更(終了)届」を改めて提出します。
申請忘れのリスク
万一「産前産後休業取得者申出書」の提出を忘れた場合、本来免除されるはずの社会保険料を会社と従業員が支払い続けることになります。
産休期間が数ヶ月に及ぶ場合、会社負担分と従業員負担分を合わせた保険料は相当な金額になります。
万が一、提出が遅れても遡って免除を受けることは可能ですが、すでに給与から控除・納付してしまった保険料を還付(精算)するための手続きは非常に煩雑です。
従業員への返金処理や、年金機構との調整など、本来不要な事務コストと混乱を招くため、遅延なく申請することが不可欠です。
すでに納付した保険料の還付手続きは複雑で、申請のタイミングによっては認められないケースもあるためです。
申請忘れは金銭的な損失と事務手続きの両面でリスクが大きいため、産休取得が決まった段階で確実に免除申請を行うことが重要です。
産休中に従業員が受け取る給付金

産休中の給与は多くの企業で無給ですが、公的な給付金によって収入はある程度保障されます。
従業員から質問された際に説明できるよう、基本的な給付金を押さえておきましょう。
主な給付金は以下の3つです。
- 出産手当金:健康保険から給与のおよそ3分の2を支給(産前42日+産後56日)
- 育児休業給付金:育児休業給付金:産休終了後、続けて育児休業を取得した場合に、雇用保険から支給(最初の6ヶ月は給与の67%、その後は50%)
- 出産育児一時金:健康保険から1人につき50万円を支給
いずれも非課税で、申請は会社を経由して健康保険組合やハローワークに行います。
詳細な計算方法や申請手続きについては、健康保険組合やハローワークにお問い合わせください。
産休・給与計算で発生するイレギュラーケース

実務では、基本的なケース以外にも、様々なイレギュラーケースが発生します。
ここでは、特に判断が難しい3つのケースと対処法を紹介します。
ケース1:産休中に従業員が退職する場合
退職日までの給与を日割り計算して支給します。
社会保険料は在職中に申請済みなら退職日まで免除されます。
住民税は残額を最終給与から引くか、引ききれない場合は従業員が自分で納付する方法に切り替えます。
年の途中退職の場合、年末調整は対象外となり、本人が翌年に確定申告で精算します。
ケース2:歩合給や変動手当がある場合の産休開始月の計算
固定月給+歩合給の給与体系の場合、基本給部分は働く予定だった日数で日割り計算します。
歩合給は、産休前に獲得した売上分は入金が産休中でも支払いが必要ですが、産休中に新たに発生した業績分は通常支給しません。
複雑な給与体系の場合は、専門家への相談も検討しましょう。
ケース3:出産日が予定よりズレた場合の免除期間の調整
出産日が予定日より早まったり遅れたりした場合、産前休業・産後休業の期間を実際の出産日に合わせて調整します。
予定日より遅れると産前休業が自動延長、早まると短縮されます。
出産日のズレに伴って社会保険料免除期間も変わるため、会社は「産前産後休業取得者変更届」を提出し、免除期間を訂正する必要があります。
ここまで見てきたように、産休の給与計算は通常とは異なる特殊な処理が多く複雑です。
対応のたびに手順を確認する負担や、ミスによる損害のリスクがあります。
産休・給与計算業務でお困りの際は専門家にご相談を
こうした複雑な産休の給与計算業務に不安を感じている方は、専門家にサポートを依頼するという選択肢も有効です。

専門家に委託することでこんな課題が解決できます
給与計算アウトソーシングを利用すれば、以下のような悩みから解放されます。
- 年に数回しか対応しないため毎回手順を確認する負担
- 複雑な給与体系での計算ミスへの不安
- 担当者が一人しかいない場合の退職・休職時の対応
- 法改正への対応の遅れ
- マイナス給与の清算や特殊なケースへの対応
社労士などの専門家によるダブルチェックと最新の法律対応により、ミス防止と法令順守が実現します。
担当者は本来の業務に集中でき、退職・休職時も業務が止まらないバックアップ体制が整います。
また、法律違反や損害のリスクも専門家が対応するため安心です。
さかえ経営なら柔軟な対応と幅広いシステムに対応
株式会社さかえ経営は、中小・中堅企業向けに給与計算アウトソーシングサービスを提供しています。
社会保険労務士監修のもと、専門資格者が正確に処理を行います。
「社会保険手続きのみ」「年末調整のみ」など部分的な委託にも柔軟に対応し、SmartHR、奉行、マネーフォワード、freeeなど幅広いシステムに対応しています。
首都圏の中堅企業を中心に、従業員規模200〜1,000名の企業まで幅広く対応してきた実績があります。
給与計算に関する無料相談も承っていますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ:産休社員の給与計算を正確に進めるために
産休社員の給与計算は、日割り計算から社会保険料免除、住民税の対処まで、複数のルールを同時に適用する必要があります。
この記事のポイント
- 産休中は無給が基本だが、就業規則によって日割り計算の方法が異なる
- 社会保険料は産休開始月から免除される(賞与も条件により免除)
- 住民税は免除されず、マイナス給与が発生するリスクがある
- 社会保険料免除の申請忘れは大きな損失につながる
- イレギュラーケースへの対応には専門知識が必要
社会保険料免除の申請や住民税の取り扱いなど、実務的な判断が必要な場面が多く、ミスをすると会社に損害が発生します。
判断に迷う場合や業務負担を減らしたい場合は、給与計算アウトソーシングもご検討ください。株式会社さかえ経営では、産休・育休などの特殊なケースにも対応しています。
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