過半数の労組と36協定を結んでいれば、全労働者に残業命令が可能?
最終更新日:2024.10.24
目次
問題の事象
一部の社員が主要な組合を離れ、合同労組に参加して新しい少数組合を作りました。この少数組合は、主要組合との36協定が彼らには当てはまらないと主張しています。
この少数組合の社員に対して、残業を命じることはできるのでしょうか。
解説(基本的な考え方)
36協定の意味
労働基準法(労基法)32条では、使用者は労働者に週40時間、一日8時間を超えて労働をさせてはならないと規定しており、この時間を法定労働時間といいます。
この法定労働時間を超えてした労働は時間外労働となり、会社が社員に時間外労働を命じると、それは労基法違反となります。
ただし、労基法36条で
事業場に労働者の過半数で構成される労働組合が存在する場合にはその労働組合と、またはそれがない場合は労働者の過半数代表者と書面による協定を締結し、協定書を労働基準監督署に提出することで、労働時間の延長や休日に労働させることが許可される特例
が設けられています。
この協定は36協定として知られており、36協定を締結し、協定書を行政官庁(労働基準監督署)に届け出ることによって、企業は一定の時間外労働や休日の労働を合法的に命じることができるようになります。
36協定を締結する相手は?
過半数組合が存在する場合
労働者の過半数が所属する多数組合が存在する場合、その組合と協定を締結します。
もしこの多数組合以外に別の少数組合が存在したとしても、過半数が所属する多数組合と協定を締結した場合には、その効力は少数組合に所属する社員を含めた全労働者におよびます。
多数組合が過半数の労働者で構成されていない場合
たとえ多数組合であっても、過半数の要件が満たされていなければ、その組合とではなく過半数代表者と36協定を結ぶ必要があります。
もし複数の組合が存在し、多数組合と少数組合を合わせて過半数となる場合、両組合代表者の連署で協定を結ぶのがよいでしょう。
組合が存在しない場合
労働者の過半数代表者と協定を締結します。
多数組合が後に過半数でなくなった場合
すでに過半数労組と締結した36協定が、後に組合員の脱退等により過半数でなくなった場合、その協定は無効になるのでしょうか?
36協定の過半数要件は、効力を生じさせるための要件であり、効力を継続させる要件ではありません。
そのため
運用上のポイント
少数組合への効力について
過半数組合と正式に36協定が結ばれ適切に報告されている場合、その協定の効力は少数組合にも適用されるため、会社は少数組合のメンバーにも残業を指示できます。
たとえ少数組合が協定の効力の無効を主張したとしても、過半数組合と締結された協定であれば、法的には有効な協定といえます。
ただ協定の次回更新時には、多数組合と少数組合との連署での協定をめざしてみるのもよいかとは思います。