「育休」の給与計算はどうすればいい?労務のイレギュラー対応を分かりやすく解説!
最終更新日:2025.12.24
従業員から「育休の申し出」があったとき、給与計算システムでどう処理すればいいのか、社会保険料はどうなるのか、給付金の申請はいつまでにやればいいのか。調べても情報が散らばっていて、何から手をつければいいか分からない。
育休の給与計算は年に数回しか対応しないため、担当者にとって「忘れた頃にやってくる難題」です。通常の給与計算とは処理が全く異なり、社会保険料の免除判定、日割り計算、給付金申請など、確認項目が多岐にわたります。
この記事では、育休中の給与計算について、制度の基本から実務処理の手順まで解説します。
この記事でわかること
- 育休中の給与と給付金の仕組み
- 育休開始月・期間中・復職月の給与計算の流れ
- 育児休業給付金の申請手続き
- 人事担当者が陥りやすいミス
【まずは“制度”を理解!】育休の給与計算における「制度」について

育休の給与計算を正確に行うには、関連する制度の基本を理解しておくことが重要です。ここでは、育児休業給付金と給与の関係、社会保険料・雇用保険の免除期間、産後パパ育休制度について、給与計算の観点から解説します。
その①「育児休業給付金」と給与の関係
育休中の給与計算では、原則給与は0円で処理します。
育休中は原則として会社から給与は支払われません(ノーワーク・ノーペイの原則)。ただし給与の代わりに、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されますが、これはハローワークから直接従業員に支給されるため、給与計算の対象外です。
給与計算システムでの設定としては、休職区分を「育児休業」に設定し、給与支給を停止する処理を行います。
その②「社会保険料・雇用保険」の免除期間について
育休期間中は、社会保険料や雇用保険料の取り扱いが通常とは異なります。ここでは、各種保険料の免除期間と給与計算上の処理について解説します。
社会保険料(健康保険・厚生年金保険):従業員・会社ともに免除
育休期間中、従業員・会社ともに社会保険料が免除されます。
免除の判定基準は以下のいずれかです。
-
月末時点で育休を取得している場合(その月の保険料が免除)
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同じ月内に開始と終了があり、14日以上の育休を取得した場合(月末を跨がなくても免除)
※賞与(ボーナス)の保険料免除については、連続して1ヶ月を超える育休を取得した場合に限られる点に注意してください。
雇用保険料:給与がないため“発生しない”
育休期間中は給与が支払われないため、雇用保険料も発生しません。
雇用保険料は給与額に対して料率をかけて計算するため、給与が0円であれば保険料も0円となります。ただし、育休開始月・終了月で一部給与が支払われる場合は、その給与に対して雇用保険料を控除します。
住民税:“免除されない”
住民税は免除されません。育休中も納税義務は継続します。給与からの天引き(特別徴収)ができなくなるため、以下のいずれかの方法で対応します。
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普通徴収への切り替え: 従業員が自治体から届く納付書で直接支払う。
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一括徴収: 休業開始前の最後の給与から、休業期間分をまとめて控除する。
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会社立替: 会社が一旦住民税を納付し、復職後に従業員から回収する。
どの方法をとるか、事前に従業員と合意しておくことが重要です。
「産後パパ育休制度」と給与計算上の扱い
なお、2025年4月から「出生後休業支援給付金」が新設されます。
両親ともに14日以上の育休を取得する(ひとり親等の例外あり)などの要件を満たせば、最大28日間、給付率が13%上乗せされます。これにより、既存の給付金と合わせて「手取り100%相当」の保障が実現します。
令和7年4月より育児休業に関連する給付金が新設。既存の給付も含めてどのような給付が受けられるのか?
問題の事象 今年の4月から、育児休業に関連する給付金がいくつか新設されると聞きました。 どのような給付が受けられるのか、既存の給付も含めて教えてください。 解説(基本的な考え方) 育児に関連した給付には、雇用保険からの育児休業等給付として 育児休業給付金 出生時育
「育休前」「育休中の間」「育休後(復帰後)」の給与計算の流れ

育休時の給与計算は、開始月・期間中・復職月で処理内容が異なります。ここでは、時系列に沿って、それぞれの段階で必要な計算・処理を詳しく解説します。
①育休開始前:「日割り計算」と「社会保険料免除」で判定
育休開始月の給与計算では、育休開始日までに勤務した分の給与を正確に計算する必要があります。
主な処理
- 「育休開始日」を正確に確認する
- 育休開始日までに「勤務した日数・時間」を集計
- 日割り計算:(月給÷その月の所定労働日数)× 実際の出勤日数
- 各種控除の処理
社会保険料は、月末時点で育休中なら免除されます。ここが最も重要なポイントです。
例えば、4月15日から育休開始の場合、4月1日〜14日分の給与を支給します。月末(4月30日)時点で育休中のため、社会保険料は免除されます。
育休期間中:給与0円、社会保険料免除の設定と届出
育休期間中は、給与計算そのものは発生しませんが、各種届出や処理が必要です。
主な処理
- 給与の支払いなし
- 社会保険料の免除設定
- 住民税は免除されないため、普通徴収に切り替え
- 「育児休業等取得者申出書」を年金事務所または健康保険組合に提出
住民税は育休中も免除されないため、給与からの天引きができない状況では、従業員が直接納付する普通徴収への切り替えが必要です。
社会保険料免除の適用を受けるには、「育児休業等取得者申出書」の提出が必須となります。
この書類を提出しないと、社会保険料が免除されず、会社・従業員ともに保険料の負担が継続してしまいます。提出期限は法律上定められていませんが、育休開始後速やかに提出しましょう。
月次の給与計算では、給与支給額が0円、社会保険料控除額も0円となっていることを確認します。住民税については、従業員が直接納付する形に切り替わっているかをチェックしてください。
復職月:日割り計算と控除再開、住民税の切り替え
復職月は、育休開始月と逆の処理を行います。
主な処理
- 復職日を確認
- 復職日から月末までの「勤務日数・時間を集計」
- 日割り計算:(月給÷その月の所定労働日数)× 実際の出勤日数
- 各種控除の再開(社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税)
社会保険料の控除については、復職月の社会保険料は、月末時点で在籍していれば控除します。
復職後に育児時短勤務を利用する場合は、時短後の労働時間に応じて給与を計算します。
時短勤務により給与が減額された場合は、社会保険料の計算基準となる標準報酬月額の見直しが可能です。
復職後3ヶ月間の給与実績をもとに、4ヶ月目から新しい保険料に変更する「育児休業等終了時改定」の手続きを行います。
通常の随時改定(月変)とは異なり、「1等級の差」でも改定が可能で、従業員の手取り額への影響を抑えるための配慮がなされています。
育児休業給付金の申請はいつまで?

育児休業給付金の申請は、通常は会社が従業員に代わって行います。ここでは、ハローワークへの申請手順、会社が行う書類作成業務、給与明細や社内通知への反映方法について解説します。
ハローワークへの申請手順とスケジュール
初回申請は、育休開始日から「“4ヶ月を経過する日”の属する月末」までに行います。例えば、4月15日から育休開始の場合、初回申請は8月31日までに行います。
必要書類
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳、出勤簿の写し
- 母子健康手帳の写し
2回目以降は、2ヶ月に1回(または1ヶ月に1回)申請します。ハローワークから送られてくる申請書に記入して提出します。申請期限を過ぎると給付金が受けられなくなる可能性があるため、期限管理が重要です。
会社が行う書類作成・証明業務
初回申請時には、以下の書類を会社が準備する必要があります。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票
- 賃金台帳・出勤簿の写し(育休開始前6ヶ月分)
- 母子健康手帳の写し
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書は、育休開始前6ヶ月の賃金、出勤日数、労働時間等を記載します。賞与は含めず、残業代や各種手当は含めます。会社が作成し、記名押印または署名が必要です。
育児休業給付受給資格確認票には、従業員の基本情報、雇用保険被保険者番号、育休開始日等を記載します。
母子健康手帳の写しは、従業員から提供してもらい、出生を証明するページをコピーします。
2回目以降の申請では、ハローワークから送られてくる育児休業給付金支給申請書に記入します。支給対象期間の出勤日数(部分就業がある場合)等を記載します。
給与明細・社内通知への反映
給付金申請の状況や社会保険料免除の情報を、給与明細や社内通知で適切に伝えることが重要です。給与明細には、育休の段階に応じて以下の情報を記載します。
育休開始月は、支給額は日割り計算後の金額、社会保険料0円(免除)、備考欄に「育児休業開始のため、○月○日まで勤務分を支給」等を記載します。
育休期間中は、支給額0円、控除額0円(社会保険料免除)、備考欄に「育児休業期間中」「社会保険料免除期間中」等を記載します。
復職月は、支給額は日割り計算後の金額、控除額は通常通り、備考欄に「○月○日復職」等を記載します。
従業員への通知については、育児休業給付金の申請状況、振込予定日、社会保険料免除の状況を定期的に通知してください。
イレギュラーケースはどう対応する?

育休中の給与計算では、通常とは異なる特殊なケースに直面することがあります。
ここでは、育休中のボーナス支給、部分就業、早期復職、育児時短勤務など、実務でよくあるイレギュラーケースへの対応方法を解説します。
育休中のボーナスについて…算定期間に勤務していれば「按分支給」
育休中に賞与支給日が到来する場合、給与計算担当者はまず就業規則や賞与規程を確認してください。
法律上、賞与を支給する義務はありませんが、賞与の算定期間に一部でも勤務していれば、その分は支給されるのが一般的です。
算定期間に一部勤務している場合は、勤務日数に応じた按分計算を行います。
例えば、算定期間6ヶ月のうち2ヶ月勤務・4ヶ月育休の場合、通常の賞与額の3分の1(2/6)を支給します。
賞与からは社会保険料と雇用保険料を控除します。
部分就業…給付金が減額されるケースあり
育休中に従業員が一部就業した場合、給与計算担当者は就業日数・時間の確認が必要です。
育休中でも、1ヶ月の就業日数が10日以下(10日を超える場合は80時間以下)なら原則、就業可能です。
就業した日数・時間分の給与は通常通り計算して支払います。社会保険料は免除のまま、雇用保険料は就業した分の給与に対して控除します。
ただし、給付金は就業日数や給与額に応じて減額または停止されます。給与と給付金の合計が休業開始時賃金日額の80%を超える場合、超えた分だけ給付金が減額されます。
給付金申請時に就業日数と支給額を正確に記載してください。
早期復職・育児時短勤務:届出と給与計算の注意点
早期復職の場合、従業員から復職日の連絡を受けたら、復職日以降は通常の給与計算に戻します。
復職月は日割り計算を行い、各種控除(社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税)を再開します。給付金は復職日の前日まで支給されるため、ハローワークに復職日の変更を届け出る必要があります。
育児時短勤務の場合、育児時短勤務は3歳未満の子を養育する従業員が1日の所定労働時間を短縮できる制度です。
時短勤務により給与が大きく減額された場合は、社会保険料の計算基準となる標準報酬月額の見直しが必要です。給与が変動した月から3ヶ月後に、等級の変更手続き(随時改定)を行います。
複雑な給与計算は専門家に任せるという選択肢

ここまで解説してきたように、育休の給与計算は通常の給与計算に加えてさらに複雑な判断と処理が必要になります。
ボーナスの按分計算、部分就業時の給付金減額計算、随時改定の判定など、年に数回しか発生しないケースのために、担当者が都度調べながら対応するのは非効率です。
給与計算をアウトソーシングすれば、こうした煩雑な計算や判断をすべて専門家に任せることができます。
特に育休対応の実績が豊富な給与計算代行サービスであれば、イレギュラーケースにも迅速かつ正確に対応できます。担当者が悩む時間や、ミスのリスクから解放され、本来の業務に集中できる環境が整います。
さかえ経営では、育休対応を含む給与計算業務を一括してサポートしています。まずは無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ:正確な育休給与計算が従業員の安心につながる
育休中の給与計算は、制度の基本から実務処理まで、多くの確認項目があります。社会保険料の免除判定、日割り計算、給付金申請など、通常の給与計算とは異なる特別な処理が必要です。
この記事のポイント
- 育休中の給与は原則0円、育児休業給付金が支給される
- 社会保険料は月末時点で育休中なら免除、住民税は免除されない
- 給付金申請は初回4ヶ月以内、以降2ヶ月ごと
- 育休開始月・復職月は日割り計算が必要
正確な処理によって、従業員は安心して育休を取得できます。
さかえ経営ではこれまで数百社以上の企業様の給与計算を代行し、多数の育休給与計算を正確に処理してきた実績があります。日割り計算、社会保険料免除判定、給付金申請、イレギュラーケースへの対応まで、すべてお任せいただけます。
複雑な計算や期限管理から解放され、人事担当者様は本来の業務に集中できます。まずは無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。