経営者や会社役員が交通事故で入院しても、加害者に休業補償を求められないのか?
最終更新日:2024.10.24
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給与は受け取っていない取締役が入院した場合、給与補償の対象にはならない?
小さな会社の取締役として、事務作業全般などを自分で行っています。先日、交通事故に遭い、入院と数カ月にわたる通院を余儀なくされました。
加害者に対して、入院中および通院期間の給与補償を請求したところ、私は会社から給与を受け取っていないため、補償を請求できないと言われました。
私は本当に給与補償を受け取れないのでしょうか。
会社の利益配当で報酬を受け取っている場合、入院しても収入に影響がない
休業補償とは、事故や疾病などによって労働ができず、その期間における収入減少を損害として補償することです。
ただし、本来得られる収入がなかった場合や、事故や疾病によらず収入を得た場合は、補償の対象外となります。
役員の場合、報酬が労働の対価ではなく、会社の利益配当として支払われるため、事故によって得られた報酬は、補償の対象とならない
ことがあります。
会社役員の報酬は、一般的には会社の利益の配分として支払われるため、事故とは関係なく受け取れるものがほとんどです。
ただし、
この場合、休業補償の対象となることがあります。
この判断は、会社の規模や取締役の地位・職務内容、報酬の額などを総合的に考慮し、判断されます。
取締役が自ら業務に従事している場合は、休業補償の対象となる可能性が高いといえます。
労働に対して報酬を得ていれば、入院で労働できなくなったことへの補償請求が可能
労災補償を請求できます。
ただし、
重要な役割の役員が、仕事ができなくなったことによる損害補償の可能性がある
会社が加害者に対して請求できる場合
従業員が入院や通院で欠勤した場合、有給休暇の申請をしていない場合は、通常会社は従業員に給与を支払いません。
しかし役員報酬の場合は、報酬が労働の対価であったとしても、会社が役員に報酬を支払う場合があります。
この場合、会社は事故に遭った役員からの労務提供ができなかったにもかかわらず、役員報酬として労働の対価を支払っていることから、事故によって生じた損害として休業補償分を加害者に対して請求できます。
また、役員が経営において重要な役割を担っている場合、役員が事故に遭って仕事ができないとその会社の事業が打撃を受けることもあります。
このような場合には、会社は加害者に対して営業利益の補償を請求することができるかもしれません。
一般的には会社の損害は間接的なものであり、営業利益の補償は請求できないことが多いとされていますが、
会社の活動と役員本人の活動が同一視できるような事情がある場合
には、営業利益の補償を請求することができます。
労働に対しての給与支払いを主張できれば休業補償の請求が可能
加害者が休業補償を拒否した場合でも、役員報酬が労務提供の対価であることを主張し、自分の職務内容を説明して休業補償の支払いを求めることができます。
人材マネジメント上のポイント
役員は労基法上の労働者(労基法9条)に該当しないため、労災保険の受給ができないとされています。
しかし、
には、
労働者(昭和34・1・26基発48号)として扱われ、労災保険の適用があります。