給与計算担当者の退職リスク|根本原因と解決策を専門家が解説
最終更新日:2025.09.28
給与計算の担当者が、うちの会社は1人しかいない。
多くの中小企業で当たり前になっているこの状況に、「もし、その担当者が突然辞めてしまったら……」と不安を感じていませんか。
結論からいうと、その不安の根本的な原因は「担当者が1人であること」以上に、「本業ではない給与計算業務を、無理に社内で抱え込んでいること」そのものにあります。
この記事では、給与計算担当者の退職がなぜ大きな経営リスクになるのか、その具体的な影響と根本原因を掘り下げます。そのうえで、単なる場当たり的な対応ではない、本質的な解決策を解説します!
- 給与計算担当者の退職が、なぜ最大のリスクといえるのか
- 担当者が退職した後に、具体的にどのような問題が起こるのか
- 給与計算担当者が辞めてしまう、構造的な理由
- 担当者退職問題の根本原因と、その解決策
給与計算の最大リスク:担当者の「退職」

給与計算業務には、計算ミスや法改正への対応漏れなど、さまざまなリスクが潜んでいます。しかし、その中でもっとも影響が大きく、そしてある日突然やってくるのが、担当者の「退職」です。
なぜなら、担当者の退職は、給与計算という会社の重要業務が完全に停止してしまうリスクに直結するからです。
とくに、多くの中小企業でよくある「担当者が1人しかいない体制」では、その人がいなくなれば代わりは誰もいません。
新任の担当者が不慣れなために起こる給与の遅延や計算ミスは、従業員の生活に直接影響し、会社への信頼を大きく損なうことにもつながりかねません。これは単なる引き継ぎの問題ではなく、会社の信用や従業員との関係性をも揺がしかねない、重大な経営リスクなのです。
退職してしまうとどんな問題が起こる?
もし、今あなたの会社の給与計算担当者が退職してしまったら、どのような事態が待っているのでしょうか。具体的には以下の問題が起こります。
・新担当者の採用と教育コストかかってしまう
・ダブルチェックなどの必要が出てくる
急いで「引き継ぎ」をしなければいけない
担当者の退職が決まったら、まず最優先で取り組むべきは業務の引き継ぎです。
なぜなら、給与計算は毎月必ず発生する業務であり、もし引き継ぎがうまくいかなければ、従業員への給与支払いが遅れたり、金額を間違えたりといった、会社の信用を直接損なう事態に発展しかねないからです。
給与の締日と支給日を確認し、残された時間で、退職者のパソコンやクラウド上に保存されている給与明細、勤怠データ、計算に使っていたシートなど、関連する情報をすべて洗い出す必要があります。
もし、業務マニュアルや手順書が整備されていれば、他の社員が一時的に業務を代行することも可能かもしれません。しかし、多くの場合、計算方法や会社独自のルールは担当者の頭の中にしかなく、他の誰も業務の進め方を把握できていないのが実情です。
そうなると、引き継ぎは非常に難しくなり、最悪の場合、給与計算が完全に止まってしまうという事態も起こりえます。
新担当者の採用と教育コストかかってしまう
急いで後任の担当者を探し、採用できたとしても、問題は終わりません。
給与計算は専門知識が求められるため、新しい担当者が一人で業務をこなせるようになるまでには、長い時間と教育コストがかかります。その間、他の社員がダブルチェックやサポートに入る必要があり、結果的に社内全体の生産性を落とすことにもなりかねません。
また、中小企業では人手不足が深刻なことも多く、すぐに適任者が見つかるとは限りません。採用活動が長引けば、その間ずっと経営者や他部署の社員が慣れない給与計算業務に追われることになり、本来の業務が滞ってしまうでしょう。
ダブルチェックなどの必要が出てくる
担当者が変わると、どうしても業務の品質が不安定になりがちです。
給与計算は1円のミスも許されないため、新しい担当者が慣れるまでは、上司や他の社員によるダブルチェックが欠かせません。ある調査では、労務担当者が抱える不安のトップは「計算や入力のミス・漏れ」であり、6割以上が日々の業務に不安を感じているという結果も出ています。
担当者が交代するタイミングは、こうしたミスがもっとも起こりやすい時期です。チェック体制を強化することは、従業員の信頼を守り、法令違反などのリスクを避けるために必須ですが、その分、社内の人的な負担が増えることは覚悟しなければなりません。
突然の退職なら、影響はさらに大きい
これまでの問題は、退職までに十分な引き継ぎ期間がある場合の話です。もし、担当者が「明日から来ません」という形で突然辞めてしまったら、その影響は計り知れません。
引き継ぎどころか、給与計算ソフトにログインすることすらできず、業務が完全に麻痺してしまう可能性もあります。
給与の支払いが遅れれば、従業員の生活を脅かすだけでなく、会社への信頼は一気に失われます。このように、担当者の突然の退職は、会社の存続にも関わるほどの大きな混乱を引き起こす可能性があるのです。
そもそも:担当者が辞めてしまう理由は?

では、なぜこれほど重要な役割を担う給与計算の担当者は、辞めてしまうのでしょうか。その背景には、担当者個人の問題だけでなく、多くの企業に共通する構造的な課題があります。
毎月の計算業務が“本業の負担”になるから
給与計算は、毎月決まった時期に膨大な作業が集中する、非常に負担の大きい仕事です。
勤怠データを集計し、残業代を計算し、社会保険料や税金を控除し……。締日から支給日までの限られた時間で、これらの煩雑な作業をミスなくこなさなければなりません。
ある調査では、給与計算業務に「4〜7営業日」かかっている企業がもっとも多いという結果も出ています。毎月これだけの時間を、神経をすり減らしながら作業している担当者の負担は、想像以上に大きいものです。
責任とプレッシャーが大きいから
給与計算は、労働基準法や税法など、専門的な知識が不可欠です。法改正も頻繁にあるため、常に最新の情報を学びつづけなければなりません。
「絶対に間違えられない」というプレッシャーは非常に大きく、ある調査では、労務担当者の6割以上が日々の業務に何らかの不安を感じていると回答しています。
たった一つの計算ミスが、従業員の生活に影響を与えたり、会社の法的リスクにつながったりする可能性もあるため、担当者は常に大きな緊張感の中で仕事をしているのです。
他の業務と兼務で、本来の仕事に集中できないから
多くの中小企業では、給与計算の専任担当者を置く余裕がなく、他の業務と兼務しているケースがほとんどです。
ある調査では、給与計算の専任担当者がいる企業はわずか34.8%で、残りの約65%は総務や経理などの業務と兼務しているという結果が出ています。
普段の業務に加えて、月末や年末の繁忙期に給与計算の作業が重なると、担当者の負担は限界に達します。残業が常態化し、心身ともに疲弊してしまっても不思議ではありません。
給与計算が本業でない担当者の割合は65%!
改めてデータを見ると、給与計算業務を、本来の専門ではない担当者が行っている割合は約65%にものぼります。
つまり、3社のうち2社では、総務や経理の担当者が、十分な研修もないまま手探りで給与計算を担っているのが実情なのです。これでは、担当者が大きな負担と不安を抱え、最終的に退職という道を選んでしまうのも無理はないでしょう。
問題の本質は「本業以外の内製化」にある

ここまで見てきたように、担当者の退職はさまざまな問題を引き起こし、その背景には担当者への過度な負担があります。
では、この問題の根本原因はどこにあるのでしょうか。
それは、「担当者が1人だから」あるいは「担当者の責任感が足りないから」ではありません。問題の本質は、多くの企業が「本業ではない給与計算業務を、社内で行うこと(内製化)が当たり前」だと考えている点にあります。
給与計算は、会社を運営する上で不可欠な業務ですが、利益を生み出すコア業務ではありません。そのノンコア業務に、貴重な社内リソースを割き、担当者一人に過度な負担とリスクを背負わせている。
この「内製化」こそが、「担当者まかせ」の状態や担当者の疲弊といった、すべての問題を引き起こす根本的な原因なのです。
抜本的な解決策は「アウトソーシング」
この構造的な問題を解決するための、もっとも有効な方法が「アウトソーシング(外部委託)」です。
給与計算のプロに業務を任せることで、担当者の退職リスクや属人化の問題から、根本的に解放されます。
アウトソーシングには、主に以下のようなメリットがあります。
専門知識の活用
頻繁な法改正にも自動で対応してくれます。 アウトソーシング先は給与計算の専門家集団です。常に最新の労働法規や税制、社会保険制度の変更点を把握しているため、自社で法改正のたびに情報を追いかける必要がなくなります。これにより、法対応の漏れによるリスクを防ぐことができます。
コスト削減
新しい担当者を採用・教育するコストが不要になります。 担当者が退職するたびに発生していた採用広告費や面接の時間、そして新しい担当者を一人前に育てるまでの教育コストが一切かからなくなります。変動費であった人件費を、予測可能な固定費として管理できるようになります。
業務効率化
社員が本来のコア業務に集中できるようになります。 給与計算は、会社の利益に直接結びつかないノンコア業務です。この業務を外部に任せることで、担当していた社員は営業や企画、顧客対応といった、会社の成長に直結する本来の仕事に集中できるようになり、組織全体の生産性が向上します。
「担当者まかせ」のリスクをなくす
担当者の退職に業務が左右されなくなります。 特定の担当者一人に業務が集中し、その人にしかやり方が分からない状態では、その人の退職が業務の停止に直結します。アウトソーシングすれば、専門のチームが標準化された手順で業務を行うため、一人の退職に左右されることなく、安定して給与計算を継続できます。
【注意点】ただし、一般的なアウトソーシングでは不十分な場合も
アウトソーシングなら何でも解決する、というわけではありません。 多くの給与計算代行サービスは、あくまで「計算」の部分だけを請け負います。 そのため、計算に必要な勤怠データを整理したり、書類を準備したりといった面倒な作業は、結局社内に残ってしまうことがほとんどです。 これでは、その作業がまた特定の担当者に集中してしまい、根本的な問題の解決にはなりません。
さかえ経営の「カイゼン給与計算」なら、面倒な“雑務”まで丸ごと解決
一般的なアウトソーシングでは解決しきれない「社内に残る雑務」の問題。 さかえ経営の「カイzen給与計算」は、その名の通り、単なる計算代行にとどまらず、お客様の業務全体を「改善」することを目指すサービスです。
計算だけでなく「勤怠チェック」からすべて代行
一般的なサービスでは、お客様自身で勤怠データを整理し、完璧な状態で渡す必要があります。 しかし、私たちのサービスでは、従業員一人ひとりの勤怠データのチェックから代行します。 タイムカードの入力ミスや打刻漏れの確認といった、もっとも手間のかかる作業から解放されるため、担当者の負担を大幅に減らすことができます。
ペーパーレス化までサポート
給与明細や年末調整の書類など、給与計算にはまだまだ紙の業務が多く残っています。 私たちは、これらの書類を電子化し、クラウド上で安全に管理する仕組みづくりまでサポートします。 書類の印刷、封入、配布といった物理的な作業がなくなり、テレワークの推進にもつながります。
会社の成長につながる「業務改善」まで提案
私たちは、ただ業務を代行するだけではありません。 お客様の状況を詳しくヒアリングした上で、「もっと効率的な勤怠管理システムはありませんか?」「この作業は自動化できますよ」といった、一歩踏み込んだ業務改善の提案を行います。 給与計算業務から完全に解放されるだけでなく、会社全体の生産性向上に貢献できるのが、私たちの強みです。
まとめ:給与計算は「外注(アウトソーシング)」も視野に!
給与計算担当者の退職は、多くの企業にとって他人事ではない、大きな経営リスクです。
その場しのぎの対策を繰り返すのではなく、この機会に、問題の根本原因である「ノンコア業務の内製化」そのものを見直してみてはいかがでしょうか。
- 給与計算担当者の退職は、会社の信用を揺がす重大なリスクである
- 退職の背景には、担当者への過度な負担や業務が「担当者まかせ」になってしまうといった構造的な問題がある
- 問題の根本原因は「本業ではない給与計算業務の内製化」にある
- アウトソーシングは、退職リスクから解放されるための有効な解決策である
さかえ経営の「カイゼン給与計算」は、単なる計算代行ではありません。勤怠データのチェックや書類整理といった雑務まで含めて、給与計算に関わるすべての業務を丸ごと代行し、貴社を属人化のリスクと担当者の負担から完全に解放します。
「うちの会社も、そろそろ本気で考えないといけないかもしれない」 そう感じた方は、ぜひ一度、さかえ経営の無料相談をご利用ください。貴社の状況を丁寧にお伺いし、最適な解決策をご提案します。