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最終更新日:2024.10.24
社員が、夫婦関係に問題があることを理由に給与を振込みから現金支給に変更するよう求めてきましたが、応じなければならないでしょうか?
また、現金支給に変更した場合に、社員の妻が代わりに自分に支払うよう申し入れてきた場合、どのように対応したらよいでしょう?

また、今回のケースでいうと
労基法上の賃金とは、
「賃金、給与、手当、賞与、その他名称のいかんを問わず労働の対象として、使用者が労働者に支払うすべてのもの」(労基法11条)。
と定義されています。
労基法上の賃金に該当すると、
これらの適用を受け(労基法24条)、このうち通貨払の原則により、会社は社員に対して、現金で賃金を支払わなくてはなりません(労基法24条1項)。
しかし、
これらの要件を満たせば、賃金を口座振込みにより支払うことが認められます(労基則7条の2及び昭63・1・1基発1号)。
給与の支払いは現金での支払いが原則で、労働者の同意を得た場合は預貯金口座に振り込むことができるというのが基本的な考え方です。
その為、社員が振込ではなく現金で受け取りたいと要求してきた場合には、会社は従う必要があります。
給与の支払方法を振込みから現金支給に変更する場合は、それまでの振込みによる支払いの同意を撤回するということなので、
賃金の受領については代理・委任等の法律行為は認められていません。(昭和63.3.14 基発第150号)
その為、たとえ妻が本人からの正式な委任状を提示して支払いを求めたとしても、代理、委任等の法律行為は無効となります。
つまり、委任状を持った妻に給与を支払ったのち社員本人より給与の支払いを求められた場合には、妻に給与を支払ったことを理由に社員本人に給与の支払いを拒むことはできないということになります。
とはいえ、本人以外には決して給与を手渡せないとなると不便が生じる場合もあり、「使者」へであれば手渡すことができるとされています。
使者というのは「自らの判断で行動することなく、本人の手足となって動く者」をいいます。
本人により決定された意思を、相手方に伝達するという「使者」に対する支払であれば、本人に対する支払と同視できるので、労基法24条違反とはなりません(昭63・3・14基発150号)。
今回のケースでいうと妻が使者と見做せるかどうかには、
これらの事情が必要です。
とはいうものの「使者」なのか「代理」なのかの区別はとても難しく、トラブルを防ぐためにも本人の作成した「賃金受領の使者として差し向ける」旨の書面 (使者差向書)を持参してもらうとよいでしょう。