始末書を出さない従業員への対応「出す義務は無い」と言うが法的にも義務は無い?
最終更新日:2024.10.24
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頻繁に遅刻する社員に、始末書を出すように言ったが従わない
当社に、頻繁に遅刻する従業員がおり、他の従業員への示しもつかないことから、始末書の提出を要求したのですが、「出す義務はない」といって提出しません。
このような従業員に対して、どのような対応ができるでしょうか。
始末書の役割は「事実関係の報告、反省や謝罪、弁明」の3つ
職場内において何らかの問題が発生した場合に、その問題の原因とおぼしき社員に対して始末書の提出を求めることが日常的に行われています。
始末書には以下の3つの役割があります。
①問題の発生原因を調査する目的で当該問題にかかわりがあったと認める社員に対して事実関係の報告を求めるもの
②問題の発生の原因等について事実を報告するとともに反省や謝罪の情を記載することを求めるもの
➂問題に対する懲戒処分を行う手続の一環で本人に弁明の機会を与えた際に本人が弁解内容を記載して提出するもの
就業規則に記載されているという前提で、始末書の提出が法的に義務については議論があるところです。
謝罪に対しては本人の自由裁量に委ねられているからです。
何かしらの形で懲罰を与えないと、職場の風紀全体が乱れる可能性があります。さらに、その結果として業績の低下、優秀な人材の離脱の可能性もあります。
提出命令に従わない場合の処分を就業規定に明記する
となります。
まずは就業規則の懲戒規定をきちんと整備する必要があります。
ポイントしては、
内容をある程度明確にするということ、
内容ごとの罰(譴責から懲戒解雇まで)の対応を明確にすること
などが挙げられます。また、未対応・無視する社員に対しての対応も明記しておく必要があります。
ただし、反省や謝罪を強制する始末書の提出は、個人意思尊重の理念から強要することはできず、始末書不提出を理由にさらに重い懲戒処分を科すことはできません。
処分を科す前に、本人の言い分を十分に聴取する必要がある
社員に対して懲戒処分を科す手続きにおいては、
必ずまず本人に弁明・弁解の機会を与えて、
本人の言い分を十分に聴取することを保障する必要があり、
本人の言い分を十分聞かずに行った懲戒処分は違法であると判断されることがあります。
たとえ事実と異なる内容が記載されていても、会社としては書き直しを強制したり、不受理扱いをしたりせずに本人の言い分をじっくり聞いた証拠として取っておくべきものです。
仮に提出を拒まれたとしても、感情的な対応は事態を深刻化させます。
なぜ提出しないのかを十分に聞き取り、本人に釈明の機会を与えたけれども拒否したという事実を記録しておくべきでしょう。まずは報告を義務付けることが最優先です。
また、
です。会社の意思を社員に明確に伝えるということは懲罰を与えるさらには、解雇になる局面において、非常に大切だからです。
人材マネジメント上のポイント
協調性がない人材が発生する要因としては様々ですが、大きく分けて3通りが考えられます。
一つは、仕事が非常にでき、それ故に協調性がないパターン、
もう一つは単にやる気がないパターン、
最後はやる気が空回りしているパターンです。
異動や懲罰を検討する前に、当該従業員の評価・勤務成績、業績等を調査し、もしそれが良ければ、組織風土全体の問題として、対応しなければなりません。
一方で、それらがあまり良くない場合には、当該従業員の処遇等も踏まえての対応を考慮する必要があります。
また、評価等の状況については、基準等がずれている可能性があるため、業績等につながるフロー等を明確にし、当該従業員の寄与を整理する必要があります。
一方で、能力不足である場合には、配置転換も検討する必要がありますが、それらを検討する前に、
低パフォーマンスの人材を中心に、PIP(業績改善プログラム(Performance Improvement Program))の実施体制・ルールを明確に
し、行っていくことが重要になってきます。