社員が反社会的勢力の構成員だと判明した場合の対応は?
最終更新日:2024.10.24
目次
問題の事象
社員の中に、反社会的勢力の構成員がいることが発覚した場合、そのことを理由に当該社員を懲戒解雇することは可能でしょうか。
解説(基本的な考え方)
暴力団などを含む反社会的勢力を社会から排除する必要性が高まっています。
このため、政府は平成19年6月に
を公表しました。
この指針では、
とされています。
具体的には、
●相手方が反社会的勢力であるかどうかについて注意を払い
●反社会的勢力であることが判明した時点で関係を速やかに解消する
といった対応が求められています。
また、地方自治体でも反社会的勢力の排除に向けた取り組みが進められており、
全都道府県で暴力団排除に関する条例(暴排条例)が施行されています。
東京の事例
例えば、東京都の「東京都暴力団排除条例」では、
●契約の相手方が暴力団関係者であることが判明した場合には契約を解除できる特約を導入する努力義務
などが定められています。
これらの「契約」には雇用契約も含まれるため、雇用契約を締結する際には、反社会的勢力との関係がないことについての誓約書の提出などが適切な対応とされています。
いずれにせよ、各地方自治体の暴排条例の内容については十分に確認することが肝要です。
反社会的勢力とは
そもそも「反社会的勢力」とは何かについては、政府の指針においても明確な定義が設けられていません。
この指針では、
を「反社会的勢力」と捉え、
暴力団関係企業
総会屋
社会運動標ぼうゴロ
政治活動標ぼうゴロ
特殊知能暴力集団
などの属性要件に加え、
法的責任を超えた不当な要求
などの行為要件にも注目することが重要であるとされています。
個別の具体的なケースにおいて、「反社会的勢力」か否かの判断が困難な場合は、その「属性」や「行為」を照らし合わせて個別に判断する必要があります。
運用上のポイント
反社会的勢力の構成員であることが発覚した社員を解雇することは可能か
社員が反社会的勢力と関わりを持っていることが発覚した場合、会社はどのような対応を取ることができるのでしょうか。
このような状況では、関与している反社会的勢力の具体的な性質や社員との関わり方、関わりを持つに至った経緯などの事情により、対応は異なります。
例えば、社員が入社前から暴力団に属していて、その関わりが強いと認められる場合、政府の指針や各地方自治体の暴排条例に基づき
ことが求められているため、解雇が客観的に合理的で社会通念上相当であると判断される可能性が高いです。
一方、社員が現在の業務と関連して反社会的勢力と一時的に関わっている場合、その具体的な関わりの程度や経緯により、解雇を含む重い処分の前に配転命令を出して関係を断つ選択肢もあります。
配転命令が不当な動機でなされた場合には権利濫用として無効になり得ますが、反社会的勢力との関係を断つための命令は一般に有効です(東亜ペイント事件・最二小判昭和61年7月14日労判477号6頁)。
裁判例
裁判例としては、力士が野球賭博や恐喝事件に関与し、暴力団関係者と協議したことを理由に日本相撲協会から懲戒解雇された事案があります(財団法人日本相撲協会事件・東京地判平成25年9月12日労経速2191号11頁)。
この事案で裁判所は、反社会的勢力との関わりを排除し、関与した力士に厳しく対処する方針を持つ日本相撲協会の評価を毀損する行為として、懲戒解雇を有効と判断しました。
人材マネジメント上のポイント
まずは、当該社員がどのような集団や個人と、どのような経緯で関わりを持っているのかを詳細に把握することが不可欠です。
これには、本人から直接ヒアリングを行い、事実確認を徹底することが求められます。
また、そのような事実確認の結果を踏まえ、解雇が相当と判断された場合であっても、まずは退職勧奨などの手段を試みて雇用契約の解消を図ることが実務上重要であると考えられます。