試用期間中なら自由に解雇できる?
最終更新日:2025.04.25
問題の事象
4月に採用した社員がミスを多発して困っています。
当社では3か月の試用期間を設けているので、期間満了時に不採用とすることは可能でしょうか?
解説(基本的な考え方)
労働基準法は「試みの使用期間」として、14日以内であれば通常の解雇手続きを行わずに解雇することを認めています。
また14日を超える場合であっても、試用期間中は通常の場合よりも広い範囲の理由で対象社員を解雇することが認められています。
ただし解雇が妥当と認められるのは
- 客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるもの
- 引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することに客観的合理性が認められるような場合
に限られているため、十分な検証が必要です。
試用期間とは
従業員の採用にあたって入社後一定期間を定め、この間に当該労働者の人物・能力を評価して本採用とするか否かを決定する制度のことを、一般に「試用期間」と呼びます。
1ヶ月から6ヶ月にわたって設定されることが多く、この期間中は「会社は都合により(または「就業規則によらずに」)、「社員として不適格と認めたときは解雇できる」などと会社の特別の解雇権を規定している企業も多いでしょう。
この試用期間については
(2) 試用期間中の解約権の行使に関しては、通常の解雇より広い範囲における解雇の自由が認められるが、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなくてはならない。
(3) 採用当初知ることができなかったような事実が試用期間中に判明し、その者を引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することに客観的合理性が認められるような場合に、解約権行使が相当である。
とされます。
試用期間中の解雇が正当な場合
経歴の詐称
応募の際に提出する書類に虚偽を記載していた場合など。
履歴書に学歴や職歴、賞罰などについて虚偽を記載していた場合や、職務経歴書に実際は経験したことのない職務を偽って記載していた場合などが該当します。
特に、業務遂行に欠かせない資格や技能についての虚偽申告については、重大な経歴詐称として取り扱うことができます。
怪我や病気
試用期間中に病気やケガで休業し、復職の見込みがない場合など。
ただし、一定期間の休業により復職できる可能性があるにもかかわらず即座に解雇した場合などは不当解雇になる可能性があり、また労災の場合は解雇制限が適用されます。
勤務態度や協調性の欠如
正当な理由がないのに勤怠状況が悪い、指示に従わない、素行が悪いといった問題があり、注意や指導を行っても改善が見られない場合など。
解雇が有効と判定された事案
雅叙園観光事件(東京地判昭60・11・20―労判464号17頁)
周囲との悶着が絶えなかった等の労働者の行為が、就業規則に解雇事由の一つとしてあげられる「就業態度が著しく不良で他に配置転換の見込みがないと認めたとき」に該当するとされ、解雇が有効と判定。
ブレーンベース事件(東京地判平13・12・25労経速1789号22頁)
①緊急の業務指示に対し速やかに応じないこと
②採用面接時にパソコン使用に精通していると述べていたにもかかわらず満足に行うことができなかったこと
③代表取締役の業務上の指示に応じなかったこと
等を理由になされた試用期間中の解雇について、期待に沿う業務が実行される可能性を見出しがたいと認められ解雇に客観的合理的理由が在し、解雇が有効と判定。
試用期間中の解雇で不当解雇となる可能性があるもの
新卒採用者に対しての「能力不足」
社会人経験のない新卒採用者に対して、能力不足を理由に試用期間中に解雇する場合など。
結果だけを理由に解雇する
新卒採用者だけでなく中途採用者に対しても、仕事の結果が芳しくないことのみを理由に試用期間中の解雇を行うことは認められません。
指導を行わないまま解雇する
能力が求めていた基準に達していないと感じた場合でも、十分な指導を行わないうちに解雇の決定を下すのは正当性を欠きます。
解雇が無効と判定された事案
テーダブルジェー事件(東京地判平13・2・27労判809号74頁)
会長に声を出して挨拶しなかったという解雇理由が社会通念上相当性を欠くものとされ、解雇が無効と判定。
まとめ
試用期間中は通常の場合よりも広い範囲の理由で対象社員を解雇することが認められおり、また14日以内の場合は予告なしの即時解雇も可能です。
ただし、解雇の可否については過去の判例などをもとに十分検討し、また正しい手続きを経るようにする必要があります。