急に仕事のミスが増えた原因はうつ病?会社の適切な対処方法を解説
2022.05.09
うつ病の従業員に退職勧告はできる?
ミスの多い若手社員がいます。ミス多発の原因は、思い込みが強く上司や先輩へ相談もせず自分の思い込みで業務を進めてしまうことにあるようです。
ミスをなくすため周囲に相談するよう指導し簡単な仕事へ転換していますが、本人に変化はありません。
そうしている間にうつ病を発症し、通院を始めました。専門医からは「自分のできる仕事への配置転換を希望してはどうか」と言われたようですが、すでにその社員より簡単な仕事は当社にはありません。専門医にはうつ病の発症は仕事が原因ではないと言われていますが、退職勧奨はできるでしょうか。
休職や配置転換など解雇を回避するための対応が必要
「未熟型うつ」「現代型うつ」「新型うつ」と呼ばれる20代30代前後の若手のうつ病が社会的に認知されるようになっています。
特徴としては「自分の得意なことを自分のペースで仕事をしているときにはこなしているが、自分の苦手なことやプレッシャーがかかった状態で困難な状況に遭遇すると、自分に都合のいい言い訳をしたり、人のせいにしたり、逆ギレしたり、攻撃的になったりする」という点があります。
結論から言うと能力不足を理由にした「突然」の解雇宣告・退職勧奨は、従業員とのトラブルとなるリスクが高くお勧めできません。
また、さらには、
を持っています。
事例では自分からうつ病で通院を始めているとのこと。うつ病と診断されているのであれば、診断書をもらい休職するのかどうかの判断を仰ぎます。
本人の希望と主治医の診断(見解)が合致していることがポイントです。
休職までは至らず出勤を続けるという判断であれば、配置転換や業務時間の短縮という対応も検討します。
と判断された事例があります(日本IBM事件 東京地裁平成23年12月28日判決)。
ポイントとなるのは、
入社当初から予見できた範囲なのか、
また休職に改善の措置、
さらには教育・指導、最悪の場合、配置転換等において解雇回避努力をした
のかどうかが論点になります。
さかえ経営では、メンタルヘルス対策のルール作りなど様々な就業規定の策定を法的な視点でサポートします。
解雇・懲戒、教育制度、労働時間のルールなど、どのようにしたら上手く運用できるか分からない。全て法律どおりに制度を構築すると業務が回らなくなってしまう。などお悩みのお持ちの企業の方、まずはお気軽にご相談ください。
時間をかけて指導しても改善されない場合のみ、解雇もやむおえない
事例では、当該社員ができる仕事への配置転換が難しいとあります。
業務指導者・業務管理者・ジョブコーチなどのサポート体制をとったり、担当させる業務を区切って管理監督するなどといった今の仕事に対する合理的配慮でカバーできることもあると思います。
それもできない場合には、退職勧奨も否めません。しかし合理的配慮ができないからすぐに退職勧奨・さらには解雇という措置を講じるのは望ましくありません。
です。会社が強く退職を勧める対応するとパワハラや違法に当たる退職強要であると取られることもあります。
当人と会社との秘密を守ったうえでの退職勧奨の面談を行います。
また、解雇に関しては、労働契約法第16条に
とあり、発達障害のみを理由とした解雇は法律上認められません。
配置転換が難しい場合においては、まずは、
と考えられます。
会社として社員のメンタルヘルス対策のルール作りが重要
メンタルヘルスの発症は、人により発症の原因も症状の重さも異なります。
だからといって個別に対応するのではなく、規程上では休職・復職を含めたルールを定める必要があります。
です。
また休職に制限回数や期限の上限を設けるか、休職中の賃金支払い(支払義務はありません)、休職中は療養専念を義務とすること、復職判定をどのようにするか(専門医の判断・診断書の提出)といった内容を「休職」の項に設けることが必要です。
さらに、
を決めます。
社会保険(健康保険)の被保険者であれば健康保険組合(または協会けんぽ)から傷病手当金を受給することもでき、連続して3日休んだ後の4日目(開始日)から通算して1年6か月の支給期間があります。
支給には「健康保険傷病手当金支給申請書」の提出が必要です。
様子がおかしいと感じたら、まずはしっかり話を聴く
同僚や部下の様子がおかしいと感じた時には、遅刻が増えたり、仕事のミスが増えたり、無表情だったり、会話が減っていたりといつもと違うサインが出ているときに、どうしたらよいか。
まずは時間をとってゆっくりと話を聴いてあげてください。その時には「がんばれ」「あなたなら大丈夫」「●●してみたら」といったアドバイスや励まし・勇気づけはいりません。
会社としてどのように対応するかも悩ましいところです。
日々の勤務態度を見守り、医師の診断を受けさせます。診断により休養・休職を勧められた場合には、速やかにその処置をとります。
休職させるほどではないという診断であったら、本人と相談し、時短勤務・配置転換など、業務・配置上の問題がない限り、本人の希望に寄り添った対応をした方が望ましいと考えられます。
この事例では
とします。職場にハラスメントがなかったか、長時間残業などがなかったかなど、労働環境に問題がある場合には、改善を速やかに進めます。
その場合において、過度なハラスメントにならないように注意が必要です。
人材マネジメント上のポイント
解雇については、慎重に進めなければならないことは前述の通りです。
人材マネジメント上の留意点としては、
改善の見込みがないのか、
他の部署等において、異動先がないのか、
またそれぞれの人材の対しての適用性に合わせた配置先がない
のかを十分に把握していることが必要になります。
また、なぜ、解雇に至ったのかをある程度可視化して置く必要があります。配置転換も視野に入れ、ある程度対応可能であれば、全社レベルで検討することも視野に入れた方が良いかと思います。
になってきます。このようなプロセルの設計に関しては、抵抗があるかもしれませんが、改善の指導と注意の促しの繰り返しによって、解雇のプロセスが実施しやすくなるのは事実です。
また、PIPの過程はあくまでも通常の制度における運用であるため、感情的にならず、淡々と行うことができることもメリットがあります。
さかえ経営では、メンタルヘルス対策のルール作りなど様々な就業規定の策定を法的な視点でサポートします。
解雇・懲戒、教育制度、労働時間のルールなど、どのようにしたら上手く運用できるか分からない。全て法律どおりに制度を構築すると業務が回らなくなってしまう。などお悩みのお持ちの企業の方、まずはお気軽にご相談ください。