派遣社員の個人情報の取り扱いの法的な注意点:緊急連絡先や携帯番号はどう扱う?
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緊急連絡先として、派遣社員の住所や電話番号は聞いて良い?
派遣先として派遣労働者を受け入れていますが、労務管理のため、また大災害のような緊急時の連絡先把握のため、派遣労働者の住所や携帯番号等を本人から直接取得することはできるのでしょうか。
派遣元に連絡のうえ使用目的を示し、本人の同意を得れば取得可能
派遣労働者は、派遣元との労働者派遣契約に基づき、派遣先の指揮命令の下、派遣先の業務に従事しているだけで、派遣先と雇用契約があるわけではありません。
したがって、派遣労働者の携帯番号や自宅の住所に関する情報(ただし、真に必要な場合に限る)等の個人情報は、原則として派遣元を通じて取得するべきですが、派遣労働者から直接取得することも可能と考えられます。
ただし、派遣先は、あらかじめ派遣元に連絡のうえ、使用目的を派遣労働者本人に示したうえで、本人の同意を得る必要があります。
原則は派遣元を通じて情報を収集する
厚生省は、派遣先による派遣労働者の個人情報の収集等について、「派遣先は、原則として派遣元を通じて、派遣労働者の就業管理上必要な情報に限って収集できる」との意見を表明しています。
したがって、まず原則として、派遣先は、派遣法35条1項各号の事項および派遣労働者の業務遂行能力に関する情報を、派遣元から取得することができます。
次に、その他の情報であっても、派遣労働者の就業管理上必要なものであれば、派遣元は、派遣労働者本人に使用目的を示し、同意を得た場合には、派遣先に提供することができます(個人情報保護法23条1項)。
派遣元の確認を得ないと、プライバシー侵害による損害賠償リスクも
派遣先が派遣労働者から直接個人情報を取得する際は、事前の派遣元への連絡、使用目的の明示および派遣労働者本人の同意を得る必要があります。
また、派遣元から取得する方法および派遣先が直接取得する方法のいずれにおいても、「派遣元事業主及び派遣先の双方が、労働派遣法や『派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針』、個人情報保護法の規定を遵守し、派遣労働者の個人情報を適切に取り扱う」ことが求められます。
このような手続・対応をとらなかった場合や、就業管理上必要なもの以外の個人情報を収集すれば、派遣先は派遣労働者に対して、プライバシー侵害として不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
災害時の連絡先や在宅勤務時の自宅把握など、本当に必要な場合に限られる
大災害のような緊急時の際の連絡先把握を目的とした携帯番号の把握や、新型コロナウイルス感染症対策とし在宅勤務実施を目的とした自宅の住所の把握、あるいは、セキュリティ管理(入館証、身分証明等の作成を含む)を目的とした写真の取得などは、派遣労働者の就業管理上必要であるといえますから、派遣先もこれを行うことが可能と考えられます。
ただし、派遣労働者の自宅住所を把握できるのは、テレワークのみにより就業を行う場合や、電話等により就業状況を確認することができない場合のほか、派遣先が派遣労働者に業務用パソコンや秘密文書等を貸与しており、その所在を把握しておく必要があるなど、物品・情報管理上の必要性がある場合など、『真に必要』な場合に限られるものと考えられます。
人材マネジメント上のポイント
情報漏洩については、その管理も勿論ですが、従業員のモラル等も重要になってきます。
人材マネジメントにおいては、そのモラルをどう形成するかだと思います。
そのためのマネジメントは、個人の特性や会社・業務に対する志向と、会社が与えるものとのギャップを埋めていくことだと考えられます。
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけでに働いているのかをという本人の志向性も重要になってきます。
また、等級制度の適切な構築が必要になります。
本来、管理監督者でないものを無理矢理、管理者として認定しようとする傾向がまだ残っていますが、等級制度の構造が年功的になってしまうリスクは勿論、場合によっては、すべての管理者要件が否認されてしまう可能性があります。