復職のタイミングは本当に自由?早く復帰したい社員の要望に会社はどこまで応じる?
最終更新日:2023.09.20
目次
メンタル疾患で休職中の社員に予定より早く復帰したいと要請されたら?
メンタル疾患で休職中の社員から、「治ったので早く復職させてほしい」と要請があります。
会社としても、人手が足りないので、早く出社させたいと考えています。
復職可能との判断が記された医師の所見、診断書を提出させるべき
労働法は、「使用者は、労働条件に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(同法第5条)と定めています。
つまり、会社は社員に対する安全配慮義務を負っています。
会社の状況、
です。そして、医師が可能だと判断しても、すぐさまそれを以て復職可能と判断するのではなく、
など、慎重な対応が求められます。
治癒していない状態で復職させ疾患が悪化したら、損害賠償責任を問われるリスク
会社が、メンタル疾患により休職中の社員から復職を求められ、会社としてもその社員に従事して欲しい業務がある、つまり、
があります。
もっとも、主治医は、当該社員が従事する業務内容を詳細に把握したうえで判断しているとは限らないことや、主治医の診断書の内容には社員やその家族の希望がふくまれている場合もあることを踏まえる必要があります。
休職規定で復職の要件を記載し、まずはトライアル期間を設けるのがベスト
休職規定において、復職の要件を具体的に記載することが必要です。
その際、以下のような厚生労働省が発表している「職場復帰支援の流れ」を参考にして、復職のフローを明確にしてください。
また、復職においてはトライアル期間を設定した方が良いでしょう。
ステップ1.病気休業開始及び休業中のケア
ステップ2.主治医による職場復帰可能の判断
ステップ3.職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
ステップ4.最終的な職場復帰の決定
<職 場 復 帰>
ステップ5.職場復帰後のフォローアップ
復職前の業務に戻すのは慎重に。業務による精神的緊張を緩和する配慮を
社員に復職に関する強い意志があるかどうかを十分に確認してください。単なる義務等からのみだと、状況をさらに悪化させる可能性があります。復職し、トライアル期間を経ても、復職前の業務に戻すのは慎重に対応してください。
主治医や産業医の診断書等において、就業上の配慮が求められていない場合であっても、復職後しばらくの間は、疲労の蓄積を避けるため、チームの人員を増やす等により勤務時間の増加を抑制したり、一定期間の時間外労働に制限をかけたり、業務による精神的緊張を緩和するため、付与する業務の量・内容についても過重にならないよう配慮する(配置転換を含む)といった、就業上の配慮の要否を検討した方がよいでしょう。
人材マネジメント上のポイント
責任感のある社員を育成することはひとつのテーマであるかと思います。しかし、過度になりすぎると、他の人に対しても悪影響を与えてしまいます。
責任感を醸成しつつも、チームの一員としての職務・役割を定義し、特定の人材に業務が集中しないように心がけると当時に、1on1等の機会を積極的に持ち、各社員の心身の状況・業務負荷等を観察する必要があります。
また、別のアプローチとして、業務の効率化やカイゼンの意識付けを行うことを目的とした、ワークショップや研修、さらには目標設定等も想定されます。いずれにしても責任感を損なうことなく、業務がカバーできる体制の構築、また、スキルアップ等の期待、また、体調優先の向けを伝える必要があります。