労働組合の活動が就業時間中に?企業が知るべき対応法
目次
就業時間に労働組合の作業をした社員を懲戒処分にできる?
就業時間中、①私物のパソコンで労働組合の組合報の作成、②休憩時間中に会社の食堂で労働組合の会議をしていた社員などがいました。
これらの社員に対して、当該活動を止めるよう指示することや懲戒処分にすることはできるのでしょうか。
原則は、就業時間中の組合活動に正当性なし
正当な組合活動については、不利益取扱いが禁止され(労組法7条1号)、また、刑事上も民事上も免責されます。
そのため、組合活動が正当なものである限り、会社が当該社員に対して注意や懲戒処分などをすると、不当労働行為と判断され、懲戒処分は公序良俗(民法90条)に反して無効となり、会社が不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を負うことがあります。
しかし、一方で、労働者には会社の指揮命令に服しつつ職務を誠実に遂行すべき義務(職務専念義務)がありますので、就業時間中は職務に専念し、他の私的活動を差し控える義務があります。
従って、就業時間中の組合活動については原則として正当性は認められません。
また、労働組合による企業施設の利用については、会社がこれを受任するべき義務はなく、団体交渉による合意に基づいて行われるべきだとされており、会社の事業所内の組合活動については、会社の施設利用権に基づく規律や制約に依存します。
つまり、労働組合の集会等のための施設利用も、原則として使用者の許諾が必要になります(新宿区郵便局事件・最三小判昭和58・12・20判時1102号140頁)。
組合に活動制約をかける前に、会社への不満を解決する努力を
労働組合は、会社が不当行為をしたと判断したとき、一定の要件のもとに、都道府県の労働委員会に不当労働行為の救済命令を申し立てることができます(労組法27条以下)。
労働委員会は、労働組合、組合員と会社を両当事者とした審査手続きを行い、最終的に不当労働行為の成否を判断し、申立ての棄却命令または救済命令を行政処分として発します。
救済命令としては、不利益取扱いについては、原則復帰(不利益取扱いの前の地位への復帰)とバックペイ(不利益取扱いがなかったら得られたあろう賃金相当額の支払い)などが発されることが典型的です。
しかしながら、現在の多く企業において、労働組合がない、またあったとしても会社と円滑な関係である場合がほとんどです。
組合活動は会社にとって有益になる場合もありますが、何かしらピンポイントな不満がある場合が多々あります。
活動に関しては、就業時間中であれば、ある程度制約をかけることは可能ですが、その前に、このような活動に至るまでの経緯、会社への不満を洗い出し、解決できるところは解決をし、解決できない場合は、組合活動に制約をかける以外のアプローチを実施しないと、会社のガバナンスは勿論、他の従業員に対する士気の低下が懸念されます。
「就業規則」などに組合活動について具体的な記載を
休憩時間は、労働者が自由に使用することができ、会社がこれに制約を加えることはできません(労基法34条3項)。
そのため、労働者が休憩時間中に、組合活動をすることは原則認めれません。
また、勿論、就業時間外の組合活動を禁止する旨を規程化することもできません。
しかし、就業時間中については、業務に専念する旨を記載することは可能です。
会社の指揮命令の明確化、業務範囲の明確化などの文言を記載することは不可欠です。
これらは、一般的な就業規則に明記されている場合が多いですが、「業務に専念する」「会社の命令」等の内容を少し具体的にイメージし、内容の修正・見直しが不可欠です。
また、それら以外においても、苦情処理機関の設立、職場環境を把握するための仕組なども同時に検討することが必要です。
それは、労務分野以外のアプローチ方法もあります。
例えば、1ON1など機会を定期的に設け、不満を含めて、社員の考えていることの把握、理解、また従業員満足度調査などの実施により、従業員のモチベーションを把握し、その結果を受けて、対応することをルール、仕組化することも重要です。
該当社員には業務命令を発し、改善されなければ労組へ抗議も検討
就業時間中に組合活動を行っている社員がいた場合には、まず業務命令を発し、速やかに業務に戻ることを命令する必要があります。その際には、当該社員の言い分を聞き、当該組合活動がなされた時間、内容、当該活動を就業時間中に行っている理由、業務妨害の程度を文書に記録するようにする必要があります。
また、業務命令にかかわらず、業務に戻らなかった場合には、その状況を「5W1H」(いつ、どこで、誰が、どのように、何をしたのか)を明記した業務指示(書面が望ましい)を発して、再度業務に戻るように指示する必要があります。
またそれでも改善されない場合、組合活動を継続した場合や頻繁に繰り返す場合には、懲戒処分及び労働組合への抗議文を提出することも検討することができます。
就業時間中にパソコンで組合報を作成しているなど、組合活動をしている事情を把握しておきながら、これを放置すると、黙認したと解釈される可能性があるので、適切な対応が必要です。
人材マネジメント上のポイント
昨今、人材マネジメントは大きく変化してきています。所謂、体育会系的な対応はタブーな風潮になってきました。
しかし、人の考え方や価値観等の変化は時間を要します。
ハラスメント教育は必要ですが、それだけでは解決は難しいです。
管理者はその組織の人・物・金・情報を活用し、組織として最適化、結果を出すというミッションを背負った役割だと考えています。
一般的には年功的になりがちですが、本来マネジメントが求められるように舵を切ることが必要です。
例えば、今いる優秀な管理者をベースにその要素を整理した方が良いかと思います。
さらに、業務等の必要性・全体の内容を会社としてある程度は把握する仕組みの構築も必要になります。
その変化にいち早く気付くということが重要になります。
それには、従業員の動向を日々、チェックすることが重要になります。
それには、月並みかもしれませんが、管理者が従業員の動向を日々チェックすることが必要です。
例えば、業務の進捗、周りとのコミュニケーション状況などが挙げられます。
また、1on1等を通じて、プライベートの悩み等もキャッチアップすることも重要になるかと思います。