取引先との飲食はどこまでが許される?社用接待の適切な範囲とは
目次
取引先との接待は問題ない?接待で禁止されることは?
当社は、仕事柄、取引先と一緒に飲食をともにする機会が多いですが、このような場合に、どのような接待を受け、あるいは接待をしても問題ないのでしょうか。
節度をわきまえた接待であれば否定するのは難しい
会社の業績を上げるために、日頃、重要な取引先や関係官庁の公務員等と会社の費用で飲食したり、あるいはゴルフ等をしたりすることがあり、一般的にこのような行為は「社用接待」と言われています。
確かに、取引先や関係官庁との良好な関係を継続的に維持していこうと目的自体は正当なものといえるでしょう。
しかし、公務員に対する接待は、公務員の職務に関するものに対してなされ、かつ社交儀礼の範囲を超えたものであれば、公務員の職務に関して、賄賂を供与したことにより、贈賄罪として、刑法198条により、懲役3年以下か250万円以下の罰金に処されることになります。
さらに、公務員以外に対する接待でも、会社の役職員等が行った場合には会社法上の贈収賄罪が成立します。
また、これに該当しない場合でも、会社の費用で接待する場合は、自己の懐が痛まないことから、必要以上に派手になされることが多いの現状です。
そのため、原則としては、コンプライアンスの観点から、社長接待は極力避けた方がよいと考えられます。
しかし、節度をわきまえて行われる限り、このような行為を一切否定するのも現実的には困難な問題であるので、以下の2点を注意して慎重に行う必要があります。
・詐欺罪や私文書偽装罪の成立
社用接待を利用した横領や背任行為に注意を
極端に不必要な濫費として、自己の欲望を満足させている場合、例えば、ホステスである自己の愛人の関心を買うべく、売上を常に店一番にさせるためだけを目的とする場合などは、社会的に許された範囲を超えて、背任罪になることもあります。
ただし、実際には、会社のために十分な接待をしたものであり、もっぱら自己の欲望のためだけに接待したものということの立証は、事実上困難な場合は多いのが現状です。
しかし、当初から取引先の客を接待していないのに、接待したという名目で自分たちだけで飲食し、その代金を接待費として請求して支払わせようとした場合は違法行為となります。
また、経理担当者が、自分たちだけで飲食し、偽りの接待費名目で料亭やクラブなどに支払いをした場合には、自己の業務上保管に係る会社の金銭を勝手に支出して費消したことになり、業務上横領罪が成立します。
この場合、10年以下の懲役に処されることになります。
接待を行う際の社用マニュアルを作成しよう
接待を完全になくすことは難しいと考えています。
その場合において、一般的には、ある一定の地位の人、または、営業等の職種に限定している場合は多いです。
その際に以下のことを定めている場合が多いです。
1)議事録等の作成(相手先、目的、会話内容等)
2)金額の制限(人数×金額)
3)経費精算のフロー(申請、承認のフロー)
これらのことを明確に定めると共に、複数人がその内容の把握、承認に関与するように構築すると同時に、万が一、不明瞭なものがあれば、不承認等もできるようなルールが策定が必要です。
さかえ経営では、給与計算のアウトソーシング、社員間のトラブル解決など労務に関するあらゆる問題解決をサポートします。
社用接待は不正の温床となりやすい。徹底した社員教育を
社用接待を一切否定するというもの、良好な取引先等の関係を維持していくためにはやりすぎという側面もあるので、会社としては、営業社員用の「社用接待行動マニュアル」などを作成して周知徹底することにより、コンプライアンス違反が生じないように注意する必要があります。
社用接待は、担当社員の不正の温床となり、会社のコンプライアンス経営の観点から好ましくない行為であることは明白です。
そこで、会社としては、社用接待は、本来避けるべき行為と言わざるを得ないことを強調して、前述のような営業社員用の「社用接待行動マニュアル」などを作成して社用接待のあり方を社内に周知し、節度のない社内接待を行わないように教育することも必要です。
人材マネジメント上のポイント
社内ルールの徹底が必要かも知れません。
しかし、ルールの徹底・管理一辺倒になってしまうと、職場がギスギスしたり、モチベーションダウンにつながってしまう可能性があります。
アプローチとしては難しいかもしれません。
ポイントしては、責任感の情勢と社内ルールの浸透を同時並行で行っていく必要があるかと思います。
責任感のある社員を育成することはひとつのテーマであるかと思います。
しかし、過度になりすぎると、他の人に対しても悪影響を与えてしまいます。
責任感を醸成しつつも、チームの一員としての職務・役割を定義し、特定の人材に業務が集中しないように心がけると当時に、1on1等の機会を積極的に持ち、各社員の心身の状況・業務負荷等を観察する必要があります。
また、別のアプローチとして、業務の効率化やカイゼンの意識付けを行うことを目的とした、ワークショップや研修、さらには目標設定等も想定されます。
いずれにしても責任感を損なうことなく、業務がカバーできる体制の構築、また、スキルアップ等の期待、また、体調優先の向けを伝える必要があります。